伝わる・伝わらない
デザインの仕事についてからはもう25年、農業を始めてからはもう10年。いったいどれだけこの言葉を使ってきたことでしょう。
伝えたいことは沢山あるけれど、実際ほとんど伝わっていない。冷静に考えれば分かるのに、気づくと「伝わってる」ことにしている私がいます。
真夏の大豆のお世話の大変さをどれだけ伝えても、そもそも大豆がいつどうやって、どんな形をしているのか?そこからはじめなければならなかったり
黄金色に揺れる麦の穂の美しさを伝えたくても、スマホの小さな画面の中で満足されてしまうもどかしさだったり
圧倒的な質量で迫ってくる海の美しさと怖さ、その時感じる人の小ささと愛しさは、やはりウネリの海に出ないと味わえないことであり
そんな畑と海の景色が混じり合う、味噌や醤油などの発酵食品は、もう感動的に凝縮されすぎて、何から話せばいいのかすらわからないわけで
かといって「諦めたらそこで終わり」だから「1%でも伝われば」と思いなおしたり、もう何年もそんな行ったり来たりを繰り返しています。
食べものの向こうに広がる豊かな景色。それを感じることで、情報では得られない豊かさを感じてもらえたらいいんだけどなぁ
かつて都会で虚無感を抱えながら過ごしていた自分に届けたいのかもしれません。
明日、日曜日の15時から、お店でゆるーくインスタライブをしたいと思います。どうなるか分かりませんが、お時間のある方は見てみてくださいね。
#インスタライブ #大切なこと
「中耕」は「ちゅうこう」と読みますが、そのまま畝の間を耕す作業のことです。
大豆の中耕作業は真夏の炎天下で行われる、一年の中でもっとも過酷な作業のひとつ。
その様子はこれまでみなさんにお伝えすることはできませんでした。一人ですし、とても写真を撮る心の余裕はないからです。
そんな念願がかなったこの写真。
別プロジェクトでわざわざ東京から来てくださったカメラマンさん @kenshimi2002に撮っていただきました。
「無農薬」の言葉の向こうにあるのはこんな風景です。
もっと畝幅を狭くして除草剤を撒けば、たくさんとれるし管理も楽ちん。
それをすることなく、こうして機械で土を草の芽にかぶせることで除草剤の代わりにしています。労力もかかるし沢山はとれません。
「無農薬がいいけど、高いのよね…」って、よく聞くし僕も言いそうになる時があります。
それは単に安いものと比べて言っているにすぎないのですが、実際に作業している人間には「あなたの作業にそんな価値はないわ」と言われているようで、心に何かグサリと刺されたような気持ちになります。
買う側はできあがったものしか見ていないし、こんな過程も伝えていないから無理もないことなんですけれど、、
無農薬でがんばろうとはじめる方はたくさんいますが、みんなからそうして心をグサグサ刺されながら、もう刺されたくないから普通のものと同じ値段にしてしまい、結局続けられずやめてしまう。
もう何度も見てきました。私にできることはなんだろうと、いつも考えます。
#大豆 #無農薬 #無肥料 #自然栽培 #在来種 #麻尻大豆 #大切なこと
何かに追われていると見えないもの。
夕暮れ時に突然はじめた庭の草むしり。庭にしゃがんで初めて、苔が一斉に芽を伸ばしていることに気がつきました。
いろいろなものが芽吹き、実りへと向かう春です。明日から慣れない環境で新しい生活が始まる方もたくさんいることでしょう。
忙しい毎日の中で自分を見失いそうになる時は、あえて全てを放り出して自然に触れてほしいものです。
いつも素通りしていた景色が見えるようになるだけでなく、自分の心の声を聞くことができますよ。
まだまだ冷え込みますのでどうかお身体ご自愛ください。
#大切なこと
まるで切り絵の中に迷い込んだような、風のない朝の畑から。
ビルもなく、電線もなく、空だけが果てしなく広がっているこの風景を、もっとたくさんの方に見てもらいたい。知ってもらいたい。
ここには人もいなければ情報もなく、安全だとか安心だとか、農薬だとか添加物だとか、頭を抱えてしまうような難しいことは何にもなくて。
いつも色々言ってるけれど、本当はこの風景を感じてもらえたらそれでよかったりもします。
茂みで眠るアナグマや野うさぎと同じように、私達は鼓動とともに生きていること。
オーガニックな選択の前に、まずは自分がオーガニックな存在だってちゃんと確認すること。
ここにいろんな人が来て、言葉では伝わらないことを感じてもらえるように。
少しずつ、ここくは前進していきます。どうぞお楽しみに。
#オーガニック #大切なこと #キャンプ #畑泊
昨年末のいい報告。
倉庫を立てた場所は9年前に購入した畑ですが、その両隣の二つの畑はずっと何も作っていませんでした。
倉庫の目の前なのでぜひ借りたかったのですが、ずっと貸してもらえず。理由は簡単に言えば余所者だから。最初のちょっとしたボタンの掛け違いでの誤解もありました。
結局9年間、耕すだけで何も作らない年月が流れましたが、先日跡を継いだ息子さんから貸していただけることになったのです。
9年…もう完全に諦めていたので不思議な気分。時間はかかるけれど、時間が解決してくれるとも言えます。
そんな私の奮闘ぶりをずっと見てきた畦の野良大根。一株だけ気の早い花を咲かせてお祝いしてくれているように見えました。
#大切なこと #米良大根 #在来種 #余所者 #新規就農 #野菜の花
終わったよー!
残り3枚の畑で大豆を刈り終えることができました。もちろん親方…汎用コンバインのおかげです(デカくて頼もしいので親方とこれから呼びます^_^)
去年の今頃は、収穫作業をしながら汗まみれ埃まみれでクラウドファンディングのことを考えていました。
1000万円なんて夢物語
…でもやらなくては何も始まらないし、体壊して終わってしまうよりずっといい…集まらなくてもいいから、やろうよ
そして映像ができて
年末に募集がはじまって
それに応えてくれたみなさんがいて
同じ想いの方が集まって
勇気や感動をたくさんもらって
本当にコンバインが現れて
…そんな一年を経て、今日があります。
こんな感動的な一年になったのはその前に認定農業者になれたからで、そうなれたのは積み重ねてきた7年の実績があったからで…
遡れば、ずっと積み重ねてきたからこそ、今があるんですね。そしてこれからも積み重なっていく壮大な「おはなし」
古代から紡がれてきた種とともに、次の世代へ紡いでいきましょう。私は畑担当で引き続きがんばります。
おいしいおはなし、これからもたーくさん届けます。滋味は心の豊かさに。
Delivering Tales of Deliciousness
Wholesome Flavours Whole Heartedly
#クラウドファンディング #大切なこと #麻尻大豆 #沖の潮 #在来種 #自然栽培 #発酵 #発酵ライフ #熟成 #酵素 #酵母 #腸活 #菌活
昭和を過ごした浜松へ。
街並みは変わっても心の昭和は鮮明に広がるものです。九州ではまず食べることのない豆味噌による煮込みも然り。
郷土の味はそこで生きた記憶と共にある。それを再確認した令和最初の三日間でした。
#大切なこと
子供たちを連れ名古屋のホテルに避難していた2011年4月。動物園に咲いていた桜を眺めながら、目に見えないものに怯えていた。
日常が無常であることを、子供たちはまだ知らなくて良かった。はたして大人たちはどうだろう。
あれから8年。私たち大人は少しでもあの日常とは違う桜を子供たちに見せられているだろうか。
でも焦らなくていい。ゆっくりゆっくり、一人ひとりが少しずつ歩み出し、この子達が大きくなる頃にはまた違う日常がありますように。
#大切なこと
種を分けて欲しいと訪れる人もいれば、私の知らないところでごはん豆を買い、それを種にして育てている人もいます。
種は誰のものでもありません。私だって高千穂のシンイチさんから受け継いでいるだけ。購入したのではなく、「豊作だったら倍返し」のルールでした。
種をつないできてくれた方へのリスペクトだけは決して忘れたくないのです。
それを忘れてしまったら種はただの物質に成り下がってしまうから。物質を食べて生きている私は、物質になってしまうから。
今日、ごはん豆のすぐ横で三分の一以下の値段で売られている麻尻大豆を見つけました。大豆(あさじり)と書いて売られている横では、黒い極小大豆まで。
黒い極小大豆も(あさじり)と書かれていましたが、それは麻尻大豆ではありません。私が地主さんの庭に生えていた3株ほどの大豆のひと枝をもらい、10粒から3年かけて増やしたものです。
私はこの大豆を売っている農家さんの顔を知っています。ごはん豆を買って育てているとは聞いていました。
自家用につくり、豊作だったので捨てるのはもったいないから、小遣い稼ぎにこうして安い値段で数袋を出しているんでしょう。なんの悪気もないんだと思います。
でもそれをされてしまったら…みなさんはどうなるかわかりますか?
直売所が安いのは、こうして年金をもらっている世代が自家用で作った余りを持ってくるから。真面目によいものを作ろうとしている農家さんは直売所に並べても高いと思われてしまうだけ。結果的に品質の悪いものが揃うことになります。
また、「無農薬」と表示してはいけない決まりがあり、市場に出すことはできません。こうした直売所こそ、若い農家さんの販売先になり、みなで次の世代を育てていくべき場所なんですが、残念なことにこんな状況なのです。
現場に入らないと分からない、誰も伝えたがらないリアル。こんなテキストをあえて投稿するのもまた、私の役割なのかなと思います。
#大切なこと #自家採種 #在来種 #直売所
ふるいで精麦された麦をふるったあとは雪景色のよう。
発売してもう5年もご愛顧いただいているここくのごはん麦、たまには詳しく説明したいと思います。
食物繊維がとれる麦ごはんが最近は流行っているので色んなところが販売していますが…
ここくのごはん麦の特徴は、九州在来種だから粒が小さく、五分づきだから歯ごたえがプチプチしていて美味しく食べられること。(炊く前に入れるのがオススメ!) 精麦したあとは扇風機でフスマをよく飛ばし、さらに写真のようにふるいをかけて粉を飛ばし、バットに全て広げて黒い麦を手で取り除いています。
市販の改良種は大粒で色も白くなるように改良されたもの。無農薬ではないので綺麗に外皮が削られてしまっているほか、歯ごたえがなくコメのように旨味もないのでなかなか続かないようです。
ちなみに最近流行りのもち麦は、この九州在来種と全く同じ六条大麦の裸麦。わずかにβ-グルカンと呼ばれる食物繊維が九州在来種よりも多く含まれることから、在来種よりも注目されることになり、一大ブームになりました。
こんなちょっとしたことを知っているかどうかでお買い物が変わります。私たち作り手からの発信はこれからどんどん大切になってくるのかもしれません。
今日は引き続き雨で畑はお休み。仕込み三昧の1日です。
こちらはここ数日ずっと共に過ごした大豆専用の脱穀機。ビーンハーベスターとも呼ばれますが、メーカーでも年間4台しか出ないという珍しいもの。
それだけ大豆を作る人がいないし、なによりこの機械で処理する量では採算が合いません。刈り取りも同時にしてくれる汎用コンバインはなんと1000万円近く。
1日の処理量としては400キロぐらいでしょうか。ここくの栽培している在来種、麻尻大豆は粒が小さく、蔓状に大きくなるためよく機械に絡まり、処理量は半分以下に落ち込みます。
ちなみに選別する機械は400万以上。ここくは手で選別していますが、やはり粒が小さいので同じグラム数でも倍の手間がかかることになります。
どんなに美味しくても、ずっと古代から伝えられてきた大切な種でも、最後は重さで価値が決められていく。
そんな現実と機械の値段が、大きく種や大豆の未来に関わっています。
申告な問題ですね。
火はいつだって人の手に負えないから怖い。
炎が地を伝って森に向かわないよう、燃えるものを排除して、風向きを見て、燃え上がる炎の高さを想像して…そんな環境を整えてから火を放つ。
空気を伝ってくるものすごい熱気。押し寄せる煙りの海。一度燃え始めた炎を制することなんて人にはできないんだ。
人は環境を整えることで自然と関わっているだけ。土も制御できるわけもなく、人の作った環境の中で、動物や虫、微生物や菌たちが、多様な命の炎を燃やしている。
おそれや戒めを、こんな大きな火を見れば多くの人が思い出すのだろうか。
畑で落ち葉焼き、脱穀後のすくも(籾殻)焼き、基盤整備前は田んぼの畔焼きと私も懐かしさが蘇ります。 おそれや戒めを知らない人が多いのでは…「思い出す」ことはないでしょうが、心に留めてほしいですね❗
子どもの頃おばあちゃんとやっていた畑焼きを思い出しました。
一年間ありがとうございました^ ^
#大切なこと
素敵な文章を有難うございます!昭和生まれの私にとって明治は遠い昔のように感じていましたが、次の元号生まれの人にとっては昭和生まれも同じなのだなぁとしみじみ^^;
お疲れさん^ ^毎週楽しみに見てたよ!
年始から宮日で毎週金曜の朝連載してきました。今日で49回目、ついにあと2回で終了です。
#大切なこと
私も欠かさずみてまーす\(//∇//)\あの時の大豆だぁと。あの景色は目に焼き付いてます
毎週欠かさずチェックしてます☘️🙆🌈🌈
美しい風景の中で生きていると、なんにもいらないって気持ちになりますよね。
うちの味噌を買ってくださる方は自分でお味噌を作られる方が多いということに最近気づいた。それもかなり何度も作られている方。 「自分で味噌作ってるから」という方は実はあんまり味噌食べない人である傾向あり。
実際に自分で作ると分かるのは1年分を1度に作るのはどうしても無理があるということに気づく。食べ終わる前に発酵が進みすぎたりカビがたくさん容器につき始めたり、どうにも勝手が悪い。
3ヶ月に一度作るぐらいでないと一年間自家製味噌というのは結構しんどい。そして、作業の大変さと材料の質、価格が総合的に判断できるようになるとうちの味噌が全然安いことに気づいてもらえる。
自分で作るんだから安く作りたい、けど安心な材料がいいという人が多いんだけど、それってめちゃくちゃ矛盾してて。。。1度にたくさん作るから安くできるのに。。。 あと「九州は白味噌」という言葉が一人歩きしてて、添加物だらけの黄色に近い味噌が白味噌だと思ってる方も多くてガッカリ。うちのは白味噌なのに色が濃いと認めてもらえない。菌が生きてたらどんどん表面は黒くなるんだよー涙
@ringoamaishi 贅沢だけどそれが一番純粋にお味噌の味を楽しむ方法ですね!よだれが…
お味噌、ひろみさんの真似してごはんにちょこんとのっけて食べるのにハマってます♪本当に美味しい。
じいちゃんばあちゃんがしている隣の畑。
この畑は草がほとんど生えなかった。雑草の種が風で飛んできて芽を出しても、2人は広い畑の中を1つずつ摘んで歩くから。
もう何十年とこんなことをしているから土に草の種が混じってない。びっくりするぐらい草が生えてこない。 …ところが昨年、さすがに体力的に厳しくなったのか畑を他所の誰かに貸した。
借りた人はニンニクを植えたまでは良かったけれど管理が全然されないから最後は草だらけに。収穫すらちゃんとせず半分くらい放置。
じいちゃんばあちゃんが「草を生やさんでくれんか」と頼むと、じゃあもう作らないと言われ、再び2人が管理することになった。
来る日も来る日もここにきて、一日中2人で草を抜いてる。今ようやく半分ぐらい。
取り残され、置き去りにされたニンニクは拾い集め、草は手で刈って倒し、乾いてから腰に結びつけた袋に入れ、ヨタヨタと畑の外へゆっくりゆっくり運んでいく。
もうきっと、草の種は随分土に混じってしまっただろう。何十年もしてきたことが一瞬のうちになくなってしまった。
悔しいとか悲しいとかではない。
これまで夫婦でしてきた静かな営みも、今毎日している目の前の作業も本当に儚い。それでもまた、静かに元の姿に戻そうとする2人のひたむきさに涙が出そうになった。
いつか、2人が来れなくなる日が来るだろう。後継者はいないから草だらけになるかもしれない。誰かが借りることになっても、その人はこの姿をきっと知らない。
今私が借りている畑にも、かつてこんな姿があったのだろうか。
@nene_dougu 石を拾ったりするのもそうなんです。ご先祖さまが大切にしてきたものを、次に使う子供達のために地道に石を拾っては畑の外に出します。そんな営みを知らない他所のひとが借りるということなんですね。
貸したがらない方の多い訳を、納得する思いがします。
私の実家は、農家をしています。兼業農家で大規模なものではない分、ひたすら手作業のしんどさです。両親が毎日こつこつ育てています。 玉ねぎの時期の重労働、手伝った時に、あまりのしんどさに、 この仕事で家族を養ってきてくれたんだと思うと、胸が詰まりました。
チクリと心が痛む投稿です💦 農作業の大変さは婆ちゃんの手伝いで分かってはいるつもりですが、◯十年も過去の記憶。皆さまには頭が下がるばかりです💦💦💦