じいちゃんばあちゃんがしている隣の畑。
この畑は草がほとんど生えなかった。雑草の種が風で飛んできて芽を出しても、2人は広い畑の中を1つずつ摘んで歩くから。
もう何十年とこんなことをしているから土に草の種が混じってない。びっくりするぐらい草が生えてこない。 …ところが昨年、さすがに体力的に厳しくなったのか畑を他所の誰かに貸した。
借りた人はニンニクを植えたまでは良かったけれど管理が全然されないから最後は草だらけに。収穫すらちゃんとせず半分くらい放置。
じいちゃんばあちゃんが「草を生やさんでくれんか」と頼むと、じゃあもう作らないと言われ、再び2人が管理することになった。
来る日も来る日もここにきて、一日中2人で草を抜いてる。今ようやく半分ぐらい。
取り残され、置き去りにされたニンニクは拾い集め、草は手で刈って倒し、乾いてから腰に結びつけた袋に入れ、ヨタヨタと畑の外へゆっくりゆっくり運んでいく。
もうきっと、草の種は随分土に混じってしまっただろう。何十年もしてきたことが一瞬のうちになくなってしまった。
悔しいとか悲しいとかではない。
これまで夫婦でしてきた静かな営みも、今毎日している目の前の作業も本当に儚い。それでもまた、静かに元の姿に戻そうとする2人のひたむきさに涙が出そうになった。
いつか、2人が来れなくなる日が来るだろう。後継者はいないから草だらけになるかもしれない。誰かが借りることになっても、その人はこの姿をきっと知らない。
今私が借りている畑にも、かつてこんな姿があったのだろうか。
#大切なこと #昔話 #人々 #農業
@nene_dougu 石を拾ったりするのもそうなんです。ご先祖さまが大切にしてきたものを、次に使う子供達のために地道に石を拾っては畑の外に出します。そんな営みを知らない他所のひとが借りるということなんですね。
貸したがらない方の多い訳を、納得する思いがします。