2024-12-02 v0

ash Design & Craft Fair 残り1週間となりました。

昨日、展示をしてくれている @ounauoさんと話していて、すっかり僕は彼女を勘違いしていたことを知りましたので、普段デザインやアートのことは話しませんが、ちょっと今から珍しく小難しいことを書こうと思います。

東京都写真美術館で今も行われている恵比寿映像祭。その第2回から8回までのWebを担当させていただいていました。

会期テーマに合わせてWebのビジュアルを考えて構築するのがわたしのミッションで、毎回とても難解な会期テーマをいただき、それに合わせたビジュアルを考えなければいけない作業。

デザイナーですから、会期テーマを代表するようなアート作品になってはいけません。テーマに合わせて世界中からアーティストの作品が集められる企画展。その作品たちが主役。

告知のためのデザインはあくまで脇役に徹しなければいけないけれども、しっかりテーマに沿ったビジュアルでなければいけないという、そもそもアートとデザインの違いは何?と何度も考えさせられる難しい作業。

とはいえ、毎回のテーマが自分のテーマといつもリンクしていて楽しい作業でもありました。

特に感慨深いのは最後のお仕事になった第8回。会期テーマは「動いている庭」。哲学者であり庭師でもあるジル・クレマンの著書から想起された企画展でした。

簡単にいうと、彼の著書で語られるのは、「人と自然」という二項対立で語られることに対するアンチテーゼでもあり、「自然を大切に。」という言葉に代表されるような、実は人間が自然を支配下に置いているような関係性は自然と言えるのかというものでした(実際はもっと深いです)

そこから生まれる様々な思考。整然と管理された美しい西洋の庭園は自然ではなく、アンコントローラブルな自然こそ本来の自然なのではないか、人もそもそも自然の中の一部じゃないか…など、まさに農業につながるような話でもあります。

わたしが考えたビジュアルは、「動いている庭」という文字を黒いアクリル板にレーザーカッターで彫り込み、そこに寒天を流し込んで、麹菌(カビ)を生やし、カビが生えていく様子を時間経過とともに撮影して映像にするというもの。

最初は計算通りに掘り込んだ文字の中で生えていたカビも、やがて文字をはみ出して生えてきます。カビからすれば文字なんて関係ありませんから、やがて文字ではなくなっていく。そんな様子をビジュアルにした、デザインと農業、味噌製造業が初めて融合したお仕事でした。

テーマタイトルや会期日程を添えることで「デザイン」としているわけですが、このビジュアル制作に至ってはかなり「アート」に近いものになってしまったかもしれません。

どちらなのか答えはありませんが、今日私が伝えたいのはこうした思考を巡らせる試みが、ここ宮崎には残念ながら皆無ということです。

以前住んでいた富山とは対照的に、宮崎はいつでも食べ物に溢れていて気候も暖かいからでしょうか。とにかく思考を深めることがありません。そんな「適当さに」随分助けられていますが、そもそも思考を深める時すらないのだとしたら、こうした思考を深める機会を作ることはすごく意義があることではないかと思ったのです。

残りの一週間、様々な作家さんの展示をどのように見ていけばいいのかも含めて、普段は得られない時間を過ごしてもらえたら幸いです。ここくで展示してくれているounaさんは、単に飾りたくなる絵を描いているのではなく、大豆畑に何度も足を運び、数えきれないほどのラフスケッチをして、かなり思考を深めた結果を示してくれています。

残りの一週間、彼女の考えている世界に足を踏みいれ、少し答えのない問いを思考してもらえたら本望です。

コーヒーやスイーツ、味噌とともに、清武町でお待ちしています。

@ash_designcraft