夏の必需品、塩について。
たまには全力で語らせていただきます。
一昨年からついに製塩業にもなったここくですが、私たちが塩づくりで大切にしているのは、一言でいうなら「ミネラルバランス」です。
血液や体液のミネラルバランスと海水のミネラルバランスがとてもよく似ているのはご存知でしょうか?
これは太古の昔、海から陸に生物が上がった名残とも言われますが、「血潮」という言葉の通り、私たちの体の中にも海水=潮が流れていると言うのは決して過言ではありません。
対して、戦後に開発されたイオン交換膜法で塩化ナトリウムだけを抽出した「食塩」。塩分の過剰摂取は良くないと言うときはこの「食塩」のことを指しています。
塩化ナトリウムばかりをとることで、血中のミネラルバランスが塩化ナトリウムに大きく傾き、さまざまな弊害が起きるからです。
そのため、正確には「塩分の取りすぎがよくない」ではなく、「塩化ナトリウムばかりの食塩が良くない」ということ。
塩分の取りすぎが良くないということで、塩を使わないで仕込んだ味噌が開発されたと先日ニュースになっていましたが、こんな大きな誤解から産まれたものと言わざるを得ません。塩は摂らないと生きていけません。
逆に「ミネラルたっぷり」という売り文句もたくさん目にするようになりました。
夏場は特に「汗をかくからミネラルが失われる」と言われたりします。
でも本当は、ミネラルが足らないのではなく、潮が足らないのです。体中を巡っている体液が汗として失われる分を、補給しなくてはならない。
ミネラルは自分で作ることができません。そのためミネラルをとることは間違いではありませんが、その時一番大切なのは海水そのままのミネラルバランスのもの、潮を摂ること。
面白いのはその潮のミネラルバランスを科学的に検査しなくても、私たちの舌が知っていることです。
塩化ナトリウムが多いほど尖りが産まれ、それ以外のミネラルが多いほどえぐみが強くなる。おいしくないのはもちろん、素材の味を引き立てるどころか主張しすぎて潰してしまいます。
塩と潮。漢字は違いますが、海に囲まれている私たちはそれを言葉として区別していないくらい、海そのもののことを指しています。
その海そのものの潮を塩にするために、私たちはわざわざ船で沖に出ています。
なぜなら沿岸部は川から様々なものが流れ出し、山からのミネラルと共に循環することなく淀んでいるから。
大海を流れてきた黒潮を、そのままこの平釜に入れて二日間薪で炊き上げて塩にする。
これは実はもっとも効率の悪い方法です。炊き上げるコストを削減するために、浜に撒いたり風で乾かしたりして塩分濃度を高めてから炊き上げるのが一般的ですが、この過程で様々な余分なものが入り込んでいき、「潮」からは遠ざかってしまいます。
ただ炊き上げるだけ。シンプルですが、これ以上に海水のミネラルバランスをそのまま塩にする方法はないでしょう。
味噌にしろ醤油にしろ、この本来のミネラルバランスである潮がベースにあることで味が活きてきます。
決して主張することなく、体にスッと馴染んでいく塩。おいしい塩はそのまま体の潮になります。
その潮とともに、菌が分解してくれた発酵食品を食べることがどれだけ身体に馴染みやすく、おいしくて優しい食事になることは言うまでもないでしょう。
この夏からは、ぜひ塩を見直してみてください。自分の舌を信じて、様々な塩の味比べをしてみるのもいいと思いますよ^ ^
長々と書きましたが、こんな難しい話より食において大切にしたいのは風景。海水を採水する風景をIGTVでも公開していますので是非ご覧ください。
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