ここくの発酵食品は、沖に流れる黒潮を船で汲み上げるところからはじまります。 宮崎市の南に位置する日南市は黒潮がすぐ近くまで迫る場所。
「潮目」というのを聞いたことがあるでしょうか。
海をよくみると、色が違う場所があります。そこには泡やごみが浮いていたりプランクトンの関係で魚が集まるので、海鳥も集まっています。
沿岸部に漂っている海水と、大海原を渡ってきた海流の境目、それが潮目です。
Fermented foods from Kokoku start with drawing up the Kuroshio Current with a boat. Nichinan City, located south of Miyazaki City, is where the Kuroshio comes very close to the shore.
Have you ever heard of "shiome" (tidal rip)?
If you look closely at the sea, you'll notice areas where the water is a different color. These spots often have foam or debris floating on the surface, and because of the plankton, fish gather there, attracting seabirds as well.
Shiome is the boundary between the seawater drifting along the coast and the ocean current that has traveled across the vast open sea.
「黒潮」と呼ばれるのは、あまりに綺麗な海水のため、光を反射することなく海底まで飲み込んでしまうから。少し恐怖すら覚える漆黒です。
It is called the 'Kuroshio' (Black Current) because the water is so clear that it absorbs light without reflecting it, reaching all the way to the sea floor. It is a jet-black that evokes a slight sense of fear.
おいしい塩とは
なぜわざわざ沖に出て海水を汲み上げるのかといえば、それは「おいしい」塩ができるからです。でもそもそも、「おいしい」塩ってなんでしょう?
Why do we go out of our way to draw seawater from the ocean? It's because it makes "delicious" salt. So, what exactly is "delicious" salt?
化学的に海水から塩化ナトリウムだけを抽出した「食塩」は辛いと感じます。
それの反動で、最近は「ミネラルたっぷり」とよく言われますが、実はミネラルが多すぎると今度はえぐみや苦味が出てきてしまいます。
私たちの舌が「おいしい」と感じる基準。それは海水そのままのミネラルバランスなんです。
Many people think that 'plenty of minerals' makes good salt, but actually, if there are too many minerals, it can result in harsh or bitter flavors. On the other hand, 'table salt,' which is chemically extracted to contain only sodium chloride from seawater, tastes salty.
The standard by which our taste buds perceive something as 'delicious' is the mineral balance that is found naturally in seawater.
沿岸の海水は、河川を伝ってさまざまな物質が溶け出しています。生活排水などももちろんですが、山や川から溶け出したミネラル、海岸に打ち寄せることによって産まれるミネラルなど、大きな地球から見ればミネラルが多い特殊な海水です。
黒潮はこうしたミネラルが過剰な海水ではなく、大海原を渡ってくる中で純度が高まった、もっとも平均的な海水。
私たちの舌はこの純度が高ければ高いほどおいしいと感じるようにできていると私たちは考えています。
ではどうして、海水らしい海水だと「おいしい」と感じるのでしょうか。その答えは私たちの生命の起源にありました。
Coastal seawater contains various dissolved substances carried by rivers. While it includes domestic wastewater, it also has minerals dissolved from mountains and rivers, and minerals produced by the waves crashing on the coast. From a large-scale perspective of the Earth, this coastal seawater is quite mineral-rich and unique.
The Kuroshio Current, on the other hand, is not mineral-rich coastal seawater but rather seawater that has traveled across the vast ocean, increasing in purity, making it the most average seawater.
Our taste buds are designed to perceive higher purity seawater as more delicious.
小さな釣船に500ℓのタンクを2つのせて出航。沖で海水を満タンにして帰港し、トラックにポンプで詰め替えます。この作業を2往復することで、一度の潮汲みで2トンの海水を汲み上げますが、2トンの海水からできあがる塩の量はたったの40kg。天気にも左右されるため、いつでも海水が汲めるわけではありません。
うねりが高い日でも少し無理をして出航したことがありました。沖で海水を満タンにし、港に帰るために旋回していたところ、うねりによって船が大きく傾いた時に、500ℓのタンクが横にズルっ!とずれることがありました。500リッターが満タンになると500kgです。船はバランスを失って大きく横に傾き、体制が立て直せないまま、高いうねりの中を命からがらにゆっくり港に帰港したことがあります。
まさに命懸けです。それからはあまり無理をせず、毎回無事に帰港できることを戒めながら出航しています。
生命の起源。
母なる海。
人間と海水の関係は、不思議なことがたくさんあります。まず、人体に必要なミネラルはすべて海水に含まれていること。そして、海水に含まれている成分と、人間の血液や羊水などのミネラルバランスが似通っているということ。
The relationship between humans and seawater is filled with many mysteries. Firstly, all the minerals necessary for the human body are found in seawater. Moreover, the components of seawater and the mineral balance in human blood and amniotic fluid are quite similar.
古代、海で誕生した生命は陸にあがる際に海水を溜め込むようになったとも言われます。わたしたちの体の半分以上は水分といわれますが、その水分とはつまり、純水(H2O)ではなく、この海水のような水分なのです。
汗や涙がしょっぱいのも、常に溜め込んでいる海水が表に出てきていると言えるのではないでしょうか。
In ancient times, it is said that life, which was born in the sea, began to retain seawater when it moved onto land. It is often said that more than half of our body is made up of water, but this water is not pure water (H2O); it is water similar to seawater. The fact that our sweat and tears are salty could be because the seawater we constantly retain is coming out.
舌に効く
腐っているものは鼻が教えてくれるように、おいしい塩というのは、つまり体に馴染む塩のこと。成分を事細かく調べなくても私たちの舌が教えてくれます。
辛くもなく苦くもない。体に染み込むようなやわらかで旨みのある塩。それがおいしい塩です。
Rotten food is detected by the nose, and delicious salt, in other words, is salt that our bodies are familiar with. Even without examining its components in detail, our tongues tell us.
Not too spicy or bitter. Salt that is soft and full of flavor that soaks into the body. That's what delicious salt is.
わたしたちの
塩造り
ミネラルバランスの純度が高い黒潮をくみあげて、さらにそれをそのまま結晶化するために、私たちは「鹹水(かんすい)」と呼ばれる、濃い塩水をつくりません。
鹹水を作った方が、効率よく塩ができる反面、土や地面から余計なミネラルが入ってしまい、おいしいから遠ざかってしまうからです。
We do not create concentrated saltwater called "鹹水 (kansui)" to directly crystallize high-purity Kuroshio mineral balanced salt. While making concentrated saltwater might be more efficient for salt production, it introduces unnecessary minerals from the soil and ground, which detract from its deliciousness.
汲み上げた黒潮はそのまま平釜へ入れ、薪で炊き上げること2日間。2トンの海水を炊き上げて、できあがる塩の量はたったの40kgです。
The Kuroshio water we scoop up is put directly into a flat kettle and cooked with firewood for two days. We cook up 2 tons of seawater, but the amount of salt we get in the end is only 40 kg.
このシンプルな方法でできあがったのが「沖の潮」。黒潮のミネラルバランスがそのまま入っているので、きっとあなたの舌もおいしいと感じてくれるはず。
舌の上で、あの美しい黒潮にもどる感覚。いつまでも口の中に旨みが拡がり、「また食べたくなる」やわらかな塩です。
What's produced by this simple method is "沖の潮" (Okinoshio). It retains the mineral balance of the Kuroshio, so your tongue will surely find it delicious.
On your tongue, you'll feel that sensation of returning to the beautiful Kuroshio. Its flavor spreads throughout your mouth, leaving a soft salt that makes you want to eat more.
発酵と腐敗は同じ
もうひとつ不思議なのは、塩が効いていると「腐らない」ということ。発酵食品はまさにこの性質を利用したものです。 「腐らない」といいましたが、実は自然界という大きな括りでみれば「腐る」も「腐らない」もなく、どちらも微生物が活動して分解していく過程です。
人間が食べれる食べれないという尺度で「腐る」「腐らない」を決めているだけ。塩が効いていると、そこで活動できる菌の種類が人になじむ菌だけになる。ここでも塩と身体の不思議な関係性があります。
Another wonder is that salt prevents food from "spoiling," or so it seems. Fermented foods indeed utilize this property.
When we say "spoiling," in fact, in the grand scheme of nature, there is neither "spoiling" nor "not spoiling," but rather a process where microorganisms are active and decomposing.
It's just a matter of humans deciding what is edible or not based on this scale of "spoiling" or "not spoiling." When salt is present, only the types of bacteria that are compatible with humans can thrive. Here again, there is a mysterious relationship between salt and the body.
塩が決める
昔から「塩が味を決める」とよく言われます。 それは単に塩の味のことを指しているのではなく、ミネラルバランスが海水に近い環境の中で、人にとってちょうどいい発酵が起きることではないでしょうか。私たちは陸上で生活しながらも、海水の環境の中で暮らしていると考えることもできるのです。
ここくの発酵食品はすべて、この沖の黒潮から製塩した「沖の潮」を使用して醸造しています。日々、この海水のミネラルバランスで育まれた発酵調味料を食べることが、どれだけ体を整えて安定させてくれることでしょう。
いい塩が作り出す発酵の環境は、おいしいにつながる道。日々使う調味料こそ、大切にしてほしいと思います。
It has long been said that "salt determines the flavor." This doesn't just refer to the taste of the salt itself, but also suggests that the right fermentation, most suitable for humans, occurs in an environment where the mineral balance is similar to seawater. Even though we live on land, we can think of ourselves as living in an environment akin to seawater.
All of Kokoku's fermented foods are brewed using "Okinoshio," the salt produced from the Kuroshio Current. Consuming fermented seasonings nurtured daily by the mineral balance of this seawater can greatly stabilize and harmonize the body.
And most importantly, what matters is that it's "delicious". The measure of "delicious" is undoubtedly the various flavors created by the microbes in this environment. The raw materials, barley and soybeans, are traditional varieties passed down from ancient times. We use materials that have been slowly nurtured in nature, without the use of pesticides, fertilizers, or relying on the power of chemistry. Please enjoy our fermented foods made with these ingredients.
麦味噌
MUGI-MISO
麦・大豆・塩、全て自家製。
麦も大豆も在来種を自然栽培。
九州で愛される香り高い麦味噌です。
九州で愛される麦味噌は香りを楽しむ短期熟成の白みそ。赤味噌のようなコクはありませんが、品のある甘い香りが特徴です。 火を入れないで食べるのが香りを生かすコツ。 お味噌汁に溶く時も、できれば火を入れてから溶きいれてください。 コクが足らないと感じたら、赤味噌をブレンドするのもおすすめです。
あわせ味噌
AWASE-MISO
麦麹の香り、米糀の甘味と旨み。
とろりとした食感が特徴の
九州で大人気のあわせ味噌。
麦味噌の香りに甘味が加わった九州で最も愛されているお味噌。 甘味・香りを重視しているので、短期熟成で赤味噌ほどのコクはありません。 一般的なあわせ味噌は米:麦=8:2ぐらいですが、ここくのあわせ味噌は1:1で仕込み、麹の量も倍入っている風味豊かなあわせ味噌。 米のでんぷん質が溶け出し、甘味と旨みを楽しませてくれるお味噌汁は一番のご馳走です。
フムスみそ
HUMMUS-MISO
ひよこ豆のペーストを米糀で発酵。
オリーブオイルとの相性が抜群で
チーズのような洋風みそ。
オリーブオイルやナッツとの相性が抜群のお味噌です。お水で溶いてサラダにまわしがけ、オリーブオイルをひとまわし、そこに砕いたカシューナッツをパラパラとかけるだけで、おしゃれな発酵サラダができあがります。パンに薄く塗って焼いたり、ミルクパスタの味付けにするとチーズのように大活躍。手軽に食べる発酵食として時間のない方にもおすすめです。
熟成麦味噌
JUKU MUGI-MISO
関東の熟成米味噌のように
麦味噌を長期熟成。
まろやかなコクが体に染み渡ります。
麦味噌やあわせ味噌のように甘味や香りではなく、コク。関東の米味噌と違う「辛くない」コクが九州の人にも受け入れられやすい赤味噌です。お味噌汁はもちろん、お料理でコクが足らないなと思ったら調味料として使えます。お味噌汁にするなら、かつおだしや椎茸がおすすめです。
沖醤油
OKI-SHOYU
在来種と沖の黒潮から産まれた
やさしい味わいの淡口醤油。
一滴を楽しむ贅沢な幸せ。
出汁のようなやさしい味わいで全く辛くないのが特徴です。黒潮の旨みと醤油の香りを楽しむために、一番おすすめな食べ方はお豆腐やたまごかけごはん、白米にそのままかけてもおいしいです。単なる調味料としてではなく、一滴の味わいを楽しんでいただけたら幸いです。
調味料は大切に。