ここくは農薬を一切使用しないだけでなく、肥料も入れない「自然栽培」で麦・大豆を栽培しています。
肥料を入れなくても麦が育つのは大豆が土を肥やす力を持っているから。大豆の根に共生する根粒菌が、作物の成長に必要な空気中の窒素を地中に固定してくれるため、肥料を入れなくても土が肥え、次に植える麦の成長を助けてくれるのです。

おもしろいことに、根粒菌は窒素分が多い土の中では働きません。麦が窒素を吸い上げるから根粒菌が働き大豆が育つという、お互いになくてはならない関係です。このように同じ畑で麦と大豆を栽培する形を「輪作」といいます。「自然栽培」というと何か新しい特別な栽培方法のようですが、大豆と組み合わせて輪作をするこの栽培方法は特に真新しいことではなく、先人達が古来よりずっと行なってきた農法です。

「麦秋」という言葉があるせいか、「麦の収穫は秋」と思われる方が多いですが、麦の収穫は梅雨前の5月末。5月の連休明けには麦の穂が黄金色に色づき黄色い絨毯が広がります。春風に揺られカサカサと音を立てながら波打つ麦畑は白昼夢のような美しい光景です。

麦は収穫時期を逃してしまうと梅雨になり、乾燥した状態で長雨に降られると真っ黒にカビてしまいます。特に湿度が高い状態になり赤カビが発生してしまうと出荷できないことになっているため、一般的には黒カビ防除、赤カビ防除のための農薬を3-4回散布することになっています。減反政策の一貫で水はけの悪い田んぼで麦を栽培するところが多く、カビを防ぐための農薬散布は欠かせない作業です。

「農薬とカビ、どちらをとりますか?」という二択で農薬の必要性を訴える方がいますが、決して二択ではありません。まずは収穫時期を逃さないこと、そして水はけの悪い田んぼでは作らないこと、さらに密植をせず風通しをよくすること。この3つを守っていれば農薬は必要なく、すべては農家の腕次第です。

麦はこのように栽培密度を減らして風通しをよくすることで無農薬を実現していますが大豆はどうでしょう?

大豆に関してはカビの心配はほとんどないものの、カメムシやガをはじめとするさまざまな虫による被害がとても大きい作物です。一般的にはこのさまざまな虫に対抗するために、さまざまな農薬で虫を殺し、収量が減らないよう努力します。

自然栽培の大切な考え方として「多様性」という考え方があります。もし畑に生えている作物が全て同じ性格だったとしたら、ひとつに虫や病気が入ることは全てに拡がることを意味します。しかし、農薬を使わず様々な性質をもった多様性のある畑になっていれば、虫や病気が入ったとしても、弱い個性をもった部分はやられてしまいますが、全てがダメになってしまうことはありません。

ここくの大豆畑には実にたくさんの虫がいます。実際に被害もありますが、同じ種類の虫ばかりが大発生して全てがダメになるということはありません。

品種もとても大切。改良された一般的な大粒大豆は虫にとっても大好物で、サヤも一箇所にまとまってつくようになっているため被害が大きくなりやすいですが、ここくの育てている在来の小粒大豆はサヤが小さく、バラバラといろんなところにサヤがつくのでそれほど被害は大きくなりません(その代わり収穫や選別は大変です・・・)。

実際のところ、収穫量を大きく左右するのは虫の影響よりも天候です。そのため、最初から天候が悪く、虫にもやられてしまった最低の収穫量を前提に、なるべく広い面積で大豆を栽培しています。仮に予定していた量がとれなかったとしても、天候がよく豊作だった前年の大豆を備蓄として大切に保管していれば量の調整ができるので問題ありません。

「平成29年産」というような表示から、「1年経ったら古くて食べられない」と勘違いされてしまいがちですが、大豆はきちんと保存しておけば少なくとも2、3年はおいしく食べられるものです。きっと古来の人たちも、こうした穀物の備蓄を怠らなかったことでしょう。そんな風に工夫していけば、虫に食べられやすい大豆も無農薬で栽培するのは何も難しいことではありません。

ここくではこのように、効率や低価格を優先せず、自然の多様性をもった環境の中で、さまざまな生き物とともに昔ながらの方法を取り入れながら無農薬・無肥料の輪作自然栽培を実現しています。